おそらく学年で1組はいたと思います。「双子」の子ども達。
小さい頃はおそろいの服でかわいくていいな~なんて思っていたし、同じ歳だから何でも相談し合える感じがした。私の地元にも「五つ子ちゃん」がいてテレビ取材も何度か訪れていて、一種の〝憧れ〟のようなものを抱いていた事もあった。しかしそれは子どもに対してであり、多胎児を抱える親の苦悩まで知る由もなかった。
子育てに悩む親は多い。ましてやそれが単胎ではなく、多胎児であった場合、周りの情報も少ない中での子育ては孤立してしまう事も少なくないだろう。
岐阜県にそんな多胎家庭をサポートする団体があります。その活動を10年以上続けてきた、自身も双子ママである方が今回の多治美人ゲストさんです。
自信も苦悩した双子の子育て、そんな中で出会った、多胎ネットさんのサークル。助けられたから助けてあげたい!力になりたい気持ちからスタッフになった経緯とは?たくさんの多胎ママさんに接して今思う事とは?
可児市の子育て健康プラザマーノさんで開催されていた育児サークルへ見学させて頂きながらの取材となりました。
案内された部屋に入ると、そこにはたくさんのふたごちゃんと、そのママ達。
背中にかわいい双子の赤ちゃんのイラストが描かれたピンクのTシャツと着た多胎ネットのスタッフさんが、所せましと動き回っていました。真奈美さんも子ども達とおもちゃで遊んだり、小さい子は抱っこしたり、時にママ達とお話したりと、くるくると動き周ります。賑わしい中、ママ同士はグループになって近状報告したり、子育ての悩みを話あったりしています。スタッフさんが子どもを見てくれているので、皆さん日頃ゆっくりお話しできない事を、ここで話し合ってとても楽しそうに見えました。
途中、真奈美さんの紙芝居風読み聞かせが始まりました。子ども達も一緒に声を出したりして、元気に返事します。
最後にママ達が感想を言う時間があり、子育てが孤立しそうな状況から少しずつ抜け出せたと涙ながらに話していた方もみえました。
こんな状況を数年前の真奈美さんも経験したそうです。
現在、彼女が所属しているNPO法人ぎふ多胎ネットは2006年11月に団体を設立(代表は糸井川誠子さん)、2012年8月に法人格を取得しています。
法人になる前に、プレパパママ教室に参加したのが、ぎふ多胎ネットさんと関わるきっかけとなります。
彼女には3人の息子さんがいらっしゃいますが、長男が小学1年生の時に双子を授かります。その事を周りに伝えると「おめでとう」より「大変だね」という言葉が返ってくる方が多く、双子だとおめでとうと言ってもらえないのかという違和感を持ちつつ、出産子育てがはじまります。
双子の子育ては思っていたより大変で、子どもを連れての外出は1人の子どもより倍の時間と体力を使います。
「私、こう見えてかなり引きこもりの方なのでこういったサークルに出会わなければ、孤立していたと思います」多胎ネットさんから紹介してもらえた多治見の多胎の子育てサークル(みどふぁど)で、同じ双子のママ達と関わる事でずいぶん気持ちが楽になったそうです。
今でこそSNSで子育ての様子やエピソードなどを発信している真奈美さんですが、子育てって苦労ばかりじゃなくて楽しんでもいいんだと考えられるようになったのは、この団体に出会い、助けてもらったからとの事。
スタッフになろうと思ったのも、自分がこんな風に助けてもらい、今度は自分が助ける立場になろうと決意したからだと言います。お子さんが園に入ったのを機に多胎ネットのスタッフとしての活動がはじまります。
「実は双子ママだと児童館にも行きづらかったりします。児童館スタッフさんは子どもを見るために配属されていませんので基本、児童館に行っても子どもを見るのは親。同じ年の子どもを同時に見るのは本当に大変で、1人を見ているともう一人に目がいかなく迷惑をかけているのではないかと感じ、結果、児童館にも行けなくなってしまう場合もあります。」
多胎児のママには引きこもりになってしまう方も少なくないと。
ぎふ多胎ネットでは、多胎家庭に対して様々な活動や支援を行っています。
子育て教室は月に4回ワンクールで、岐阜県内の各会場で開催、プレパパママ教室は月に1回、赤ちゃん健診サポートも多治見市、土岐市、可児市、岐阜市、大垣市などで行っております。その他にも多胎家庭を訪問して親さんと話をしたり、子育てサポートをする支援もその都度行っていますし、入院中の多胎ママのサポートをするような病院訪問や、多胎家庭向けのファミリーフェスタなどのイベント開催など、活動は多岐に渡ります。
現在所属するスタッフは80名ほど。岐阜県内のそれぞれの地域で活動していらっしゃいます。
取材にうかがった日は、子育て教室が行われた日で約30組の方が参加されていました。子どもはその倍なのでなんと60人!!多治見市はさらに双子が多い地域ですし、岐阜市近郊だと50組くらい集まりますとの事。
スタッフも、もともと育児教室に参加されていた方が多く、真奈美さんのように、助けてもらったから今度は助ける側でお手伝いしたいと活動に参加されています。
「代表の糸井川に関しては、ほんとにサイボーグなんじゃないかと思います(笑)」と真奈美さん。
「本業の仕事が終わった後、ほぼ毎日どこかの多胎家庭の支援や講師に行ってますから」と。
代表はもちろん、多胎ネットのスタッフさんは、多胎育児に苦しむ親達の何かの力になりたい!とその想いで動いているのだとひしひしと伝わってきました。
とはいえ、この活動を継続していくためには、スタッフ一人一人の『想い』だけに頼っているだけではいけないと感じていますと。
「今は40代~50代のスタッフが主に活動していますが、これを次世代に引き継いでいくために、企業や行政ともタッグを組んで事業としての仕組みを作り、仕事として賃金も確保していく事も今後の課題だと思います。そういう仕組みができ、この活動が安定して継続して行けるようになれば他市のロールモデルとなり、全国に多胎家庭のサポート活動事業が広まっていく事が私たちの願いです。」
「豊田市で三つ子の虐待死という悲しい事件が起こってしまいました。これは決して他人事ではなく、もしかして自分にも誰にでも起こり得た事なのではないかと思います。悲しい事に、この母親は一度も他の多胎ママに会う事もなく、行政からの有益なサポートも届かなかった。このような事件が再び起きないように、子育てを孤立化させない事、横のつながりを作っていく事が私たちの使命ではないかと思います」
多胎児の妊婦教室での自己紹介の時に、参加した皆さんが全員泣いてしまった事もあったとの事。それほど不安を抱えているママが、教室やサークルを通じて気持ちを吐き出せる場所は絶対に必要だと感じましたし、多胎ママにとって唯一気持ちが楽になる場所であるのなら、この活動は途絶えさせてはいけないと思います。
真奈美さんの長男と双子兄弟は8学年離れているのですが、長男が小学1~2年生の時には、双子の子育てで大変だった事もあり、まったくと言っていい程、勉強や生活を見てやれなかったと言います。弟たちに手が掛かりさぞかし長男には不憫な思いをさせてしまっていたのではないかと思っていたのですが、長男が大学生になった時に、「自分がほっとかれた気はまったくしなかった」と言ってくれて、救われた気持ちになったと言います。
「同じような状況にいるママに、少し先に経験してきた自分が〝大丈夫だよ、子供はきっとわかってくれているよ〟と伝えたい。世の中にはいろんな情報があふれているけど、やはり同じ地域で子育てしている、もしくはしてきたママ同士の交流や情報交換に勝るものはないです」と真奈美さんは言われます。もし、少しでも悩んでいる人がいたら、まずサークルから参加してみたらどうでしょうか。
子育てには過渡期が必ずきます。その過渡期を迎える前は悩んだり、自己否定したり、子どもに辛く当たってしまい自己嫌悪に陥ったり、親は色々な感情を経験していきます。そんな時、そこを迎え終わった先輩ママとの交流、同じ悩みを抱えるママ同士の交流、そして実務的にサポートしてくれる団体や行政との関わりがあることで乗り越え方は変わってきます。子育てはやはり一人ではできないのです。
この取材が終わった後、朝の情報番組で『負担の多い双子育児を社会で支える仕組み』という特集で、全国の3つの団体や行政が紹介されていました。その1つにこのぎふ多胎ネットさんが取り上げていた事がとても誇らしく思えました。
取材日に開催されていた子育て教室に参加されていた一人の双子ママにお話を聞く事ができました。
「孤立しがちな多胎のママ達がこのように集まれる場所を作ってくれた多胎ネットの皆さんには感謝しています。この出会いを通して双子の親さんでバザーやイベントなどもできたらいいし、自分の子ども達が大きくなったら、またその下の双子ママ達に経験を伝えていけたらいいなと思っています」と明るい笑顔で話してくださいました。
参加者の皆さんが多胎育児の苦しさから抜け出し、楽しさに変わり、ママや子どもたちの笑顔が世代世代で受け継がれていく循環型支援を生み出している、真奈美さんをはじめ多胎ネットのスタッフさんのこの活動が広がっていくように応援せずにはいられません。
最近は綿素材のロングスカートを好んではきます。パンツより意外と楽で、少し女の子らしいので(笑)
私お酒が好きなんです(笑)その中でも特に日本酒が好きです。だからまずたくさんの種類のお酒がおいてあることにワクワクします。そしてここのオーナー夫婦が本当にいい人で、ほんの少しの時間だけど話をすると気持ちが癒されますし、行くたびに気持ちが楽になる私のパワースポットみたいなところです。
お店に入らなくて前を通るだけでも真奈美さんは元気になるそうです!
とにかくパワーのある女性が多いこと!地域の人や街のために色々な良い活動をしている方も本当にたくさんいらっしゃいます。また、ほどよく都会で田舎のため、人が繋がりやすいのもいいですね。
多胎ネットの活動も専門家によると、この規模の都市だから広がりやすいとの事でした。
子どもがサッカーとか野球とか自由にできる場所があるといいと思います。禁止されている場所も多くて、球技ができる場所は一部有料なところなので、無料で地域問わずできる場所があると、他の地域の子ども達とも気軽に誘い合って遊べるかなとも思います。
取材・ライター |
: |
山下真美子 (POLA 紗ら) |
ヘアメイク・コーディネート | : | 鈴木利奈子(POLA THE BEAUTY多治見住吉店) |
動画撮影編集 |
: | 富田由芳(ロージーチークス ) |
ネイルデザイン |
: | 小林八智子(ネイルサロン トレゾール ) |
カメラマン | : | 勝股聡子 |
Webサイト制作 | : | 馬場研二 |