#011 三宅美也子さん


お名前:三宅美也子さん

多治見南消防署 消防士)

出身 :岐阜県各務原市生まれ

現在 :多治見市在住

取材日:2019年8月19日

小学生男子がなりたい職業ランキング。今でも野球選手、サッカー選手、医師は上位であるが、最近ではゲーム制作関係やユーチューバーなどというのもランキングしている。

女子ではパティシエ、保育士、看護師、デザイナーが人気である。

数年前は警察官や消防士なども「男子」のなりたい職業としてあがっていた。しかし決して女子のなりたい職業としてランキングする事はなかった。それほど警察官や自衛隊、消防士は男性の職業であるとの意識が強い。

一度は消防士採用試験に落ちたものの、あきらめきれず採用試験を受け、『多治見市初の女性消防士』として夢を叶えた方が今回の多治美人ゲストさんです。

母となり守るべき家族がいながらも、危険と隣り合わせの現場消防士を続ける理由とは?

人の生死に関る仕事の実情とは?こらから仕事を選ぶ女性に伝えたい事とは?

消防士を諦めきれない郵便局員

インタビュー当日、背中に「多治見市消防本部」と記された制服で迎えてくれた美也子さん。事前打ち合わせでお会いした時のふんわりしたスカート姿とはまるで違い、かっこ良さにハッとされられた。ブルーとオレンジの制服を着ている小柄な彼女が妙に凛々しくみえる。

岐阜県各務ヶ原市に生まれ、小学校入学と同時に可児市に移住。高校卒業までを可児市で過ごされます。愛知県の大学に進学の際、実家を離れます。はじめは小中学生の教員を目指そうと思いましたが、学校の先生となると人に成績をつけ、評価をしなければいけない。それがなんだか自分には向いていないような気がして、養護教諭、いわゆる保健室の先生を目指していました。

しかし後に彼女が消防士という職業に憧れを抱くようになったのには、ある出来事が。

「大学3年生の時に男性の友人が、大学を中退して消防士になったのです。その友人がすごく頑張っていて輝いていました。

その時、女性も消防士になれる事を知ったことと、TVで女性救命士が活躍している姿をみて衝撃を受けました。」

大学卒業後は消防士になろうと、消防士試験を受験した美也子さんでしたが、初めの採用試験は不合格。卒業後の就職先は郵便局でした。そこで3年間勤めますが、どうしても消防士への夢はあきらめられなかったと。大学で学んだ養護や医療の知識を消防士でも生かせるはずだと考えていました。

そして、再度採用試験を受けます。そして多治見市職員として初の女性消防士として採用される事となったのです!

「念願の消防士になれるとあってやはり嬉しかったですね。」美也子さん26歳の時でした。

多治見初女性消防士誕生

はじめの所属は庶務課でした。そこに配属されながら消防学校に通います。

消防学校卒業後、いよいよ現場での勤務となるわけですが、多治見南消防署にははじめ女性仮眠室も浴室もなかった。

「推測にすぎませんが、おそらく女性が24時間勤務をする事を考えてなかったと思います。自身が消防士として入った年に、女性も火災現場での警防活動をする事が活性化してきていました。自分は多治見市では初の女性消防士として採用となりましたが、他市ですと川崎市では昭和44年にはすでに女性消防士を採用していて、現在は多くの女性消防士が全国で活躍しています。」

美也子さんが職員としてきたときの、男性職員さんの反応はどうでしたか?

「私も緊張していましたが、男性職員さんのほうが気を使われていたと思います(笑)。職員としての初めの仕事は、消防団の事務。1~2か月後は予防警防課という部署にて日勤の仕事をしていました。」

そしてその年にご結婚されます。ご主人様は、郵便局時代からお付き合いがあった方で、サービス業のサラリーマン。

平日休みの方なので、日勤で週末休みの美也子さんとはまったく休みが合いませんでした。

そしてその翌年5月にお一人目をご出産されます。

「はいってからすぐに結婚出産と職場にはだいぶ迷惑をかけたと思います。それでも辞めなかったのは、やはりとても苦労してやっとこの仕事に就いたし、これまで頑張ってきたことを無駄にしたくなかったから。1年の育児休暇後、予防警防課にて復帰した仕事内容は火災調査や立入検査。火災調査は火災現場での原因調査をします。火災現場の関係者の方や、初期消火した方、通報者の方にどんな状況だったかをお伺いして報告書にまとめます。立入検査は各事業所に出向いて、避難管理や防災管理面での指導などをしていました。

悲惨な火災現場でご遺族の方にお会いしてお話を聞くこともありましたが、仕事として自分の聞きたい事ばかりをお聞きするだけでなく、悲しい気持ちにも寄り添って人の気持ちも考えながらお話をきく事はここで学びました。

そんな経験を積みながらも、自分が本当にしたかった仕事は〝救急車に乗って実際の現場で人を助けたい〟でした。」

現場出動の仕事に就いたのは、下の子供さんが小学生1年生の時。

しかし火災現場や事故現場での仕事は危険と隣り合わせ。ご主人様は何とおっしゃいましたか?

「俺死ぬって言ってました(笑)。」と、変な意味ではなく現場仕事となれば、当然夜勤で朝に自分がいないとなると、子供さんの朝の支度はすべてご主人様。はじめはそのサイクルに2人とも戸惑いましたが、現在は2日もしくは3日当直のあと2日休みというスタイルの方が、美也子さんも家事などの自宅の事をゆったりとできるので、ご主人様もその方が良かったと言われているようです。

訓練、訓練、そして訓練

「消防学校を卒業してすぐに現場での勤務ならよかったですが、自分の場合かなりのブランクがあり不安でしたが、実際にダイレクトに人を助ける仕事にはとてもやりがいを感じています。」

日頃はどんな訓練をされているのでしょうか?

「警防訓練・救急訓練・救助訓練などなど多岐にわたり訓練しています。朝に今日乗る車両が決まっているのですが日替わりで変わるので、どんな場面がきても対応できなければいけないです。だからこそ日頃の訓練がとても大切になってきます。」

女性消防士として、自分ができる役割はどのように考えていますか?

「消防士は男性職と思われている事もあると思います。実際に力がいる仕事で、重い機材を運ぶ時、人を運ぶ時は女性の私が力になれない事もあります。しかし女性しかできない、ソフト面でのフォロー、例えば有事の現場での女性用浴室やトイレなどの誘導、女性ならではの疾患のお話を聞いてあげられる事など、女性だから気づける事もあると思います。男性女性職員がそれぞれの特徴を生かしてこそ良いチームワークになると思います。

現状、他の公務員に比べて、女性消防士の割合はかなり少ないです。国の方も各消防本部5%の女性職員の採用を推進しています。」

自分だからできる事、を

「危険で体力のいる仕事のイメージが強い消防士ですが、女性ができる仕事内容もあります。というより女性のよりきめ細かい対応が求められる現場もあります。自身も結婚、出産を経験しながらも仕事を続けていけています。実は消防の仕事には様々な業務があり、個性やライフステージに合わせて働けるので、様々な業務で活躍できます。これから女性消防士を目指している方もぜひ思い切ってチャレンジして頂きたいです。

消防士になったばかりの時は、隊長の指示に従って動いていました。何年かたって後輩もどんどん入署してきた時、今後は自分が指導し、的確な指示ができるよう勉強していかなければいけない立場になってきました。

女性はライフステージが変わっても、働ける環境にあるという事を自分が証明していけたらいいと考えていますし、その事例となって女性が長く活躍できる職場となるといいですね。」

 

消防庁が発行している「女性消防士なるほどBOOK」という冊子には様々な年齢、状況(独身・既婚・子供さんありなど)、立場で活躍されている女性の方が紹介されていました。

東濃で初の女性消防士となった美也子さんも、またこの地区の前例となって、東濃界隈でも女性消防士は徐々に増えてきている。「自分はずいぶん遠回りしましたが、自分が本当にやりたい事、好きな事はいくつになってもあきらめずチャレンジしてもらいたいです。女性だからなれない職業は無いと思います。自分だからできる役割を仕事に生かしていけばどんなライフステージとなっても続けられます。」

そう話す彼女は、やはり初めにあった凛々しい印象は変わらないが、素敵な笑顔はやはり男性職員の華なのです。


好きなファッションは?

あまりオシャレではないですし、かっちりした服は苦手なので、着まわしのきくカジュアルでシンプルな洋服が好きです。


多治見お気に入りスポットは?


お気に入りの理由は?

実は可児市がご実家の美也子さんは可児方面に遊びに行くことが多いとの事で、今回、撮影現場に最近オープンしたギャラリー&カフェのガレリアさんに撮影協力をお願いしました。

中庭には緑が多く、ガラス張りの店内には数多くの陶器やガラス作品の展示があり、色合いがとてもキレイです。

美也子さんに着て頂いた赤と紺のはっきりした色合いのワンピースがこの緑の多いギャラリーに映えました。


多治見の好きなところ・いいところ

ある程度、自然が残っているところです。そこで子供を遊ばすことができますので良い環境なところだと思います。

もっと多治見のすてきな場所を教えていただきたいかも(笑)。


多治見がもっとこうなったらいいな

子育てをしていて、お金をあまりかけず子供と行ける施設が少ない気がします。児童館は充実していますが、屋根ありで遊べる施設があるといいなと思います。街中が渋滞する事が多いので、渋滞緩和できるように道路ができるといいです。


コーディネート・取材・ライター

:

山下真美子 (POLA 紗ら)
ヘアメイク 鈴木利奈子(POLA THE BEAUTY多治見住吉店

動画撮影編集

: 富田由芳(ロージーチークス )

ネイルデザイン

: 小林八智子(ネイルサロン トレゾール 
カメラマン : 勝股聡子
ウェブサイト制作 : 馬場研二